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第7章:目に見えないサービスを扱う難しさ

2017年7月18日

大学卒業後、最初に就職したのは、大手英会話スクールでした。語学学習テキストや留学雑誌を制作する部門への配属を希望して入社したのですが、まず新入社員は全員、各地にあるスクールに配属され、営業職を経験することになります。

英会話学習に興味を持って来校されたお客様に、スクールのシステムやカリキュラムについて説明をして、その方にぴったりのコースを提案し、契約してもらう仕事でした。

この仕事の難しさは何と言っても、英語レッスンという「目に見えない商品(無形サービス)を扱うこと」でした。保険や旅行などもそうですが、家電製品や食べ物などのような「目に見える商品」ではないので、お客様に商品を手に撮って触ってみて、実際に使ってみていただいて…ということができないのです。

そこで必要だったのが、「どれだけお客様に商品購入後の自分の姿を具体的に想像してもらい、心を揺さぶり、“挑戦してみたいな!”というところまで気持ちを引き上げられるか」というカウンセリングや傾聴のスキルでした。新入社員には難易度が高く、なかなかうまく成約できません。

そこでふと考えました。「目に見えない商品なのであれば、なんらかの目に見えるものがあったらいいのでは?」と。

重要なのは「見える化」

そのとき注目したのが、レベルチェックテスト(受講を検討するお客様に対してネイティブの講師が行う短い面談)でした。その方の入校に備えて、担当した講師は個人カルテにチェック結果を記録して保管するのですが、お客様に対しては、私たち日本人スタッフが「その方の英語レベル」と「講師からの簡単なコメント」を口頭で伝えるだけのオペレーションでした。

そこで、「お客様にお渡しするフィードバックシートを作る」ことを閃いたのです。

当時パソコン作業が苦手だった私は、なんと手書きでそのフォーマットを作りました。(新入社員だからこそできる大胆な試みです。)一応完成したものを上司に見せて許可をもらい、実際に使ってみることにしました。

すると、フィードバックシートを手渡した途端、目の前のお客様がとても嬉しそうな表情を見せてくれるではありませんか。さらに、フィードバックや学習方法の提案を、興味を持って前のめりで聞いてくださる様子が手に取るようにわかったのです。

また、「カウンセリングしやすくなった! 提案しやすくなった!」と同僚にも好評で、はからずも「お客様との対話やコミュニケーションを促す営業ツール」として活用されるようになりました。

正直、「このシートを使うだけで、こんなに違うの?」と、我ながら驚いた経験です。

成約後のキャンセルが多いのはなぜか?

あるとき営業部内で「成約後のキャンセルの多さ」が話題になったことがあり、その改善のため、あるデータを取ってみることにしました。

通常、契約いただいたお客様には、「テキストは今日持って帰りますか? 開講日にお渡ししましょうか?」と聞いて、お客様が希望するタイミングでテキストをお渡ししていました。ところが興味深いことに、「今日持って帰る」方にはキャンセルが少なく、「開講日に受け取る」方にはキャンセルが多いことがわかったのです。

そこで、それ以降は可能な限り申し込み当日に、「教材テキスト一式を渡す」というやり方に統一することにしました。

お客様がレッスンに申し込んだときの「がんばろう」「楽しみ!」というやる気を、私たちスタッフに代わって「教材が」維持する役割を果たしてくれていたようです。このことに私はいたく感動しました。

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